2020/2 出版流通学院
書店の閉店のニュースになると必ずといっていいほど取り上げられるのが、「書店の利益率が低い」という点です。
一般小売業と比べれば書店の売上総利益率が低いことは確かです。
売上総利益は、
売上総利率=売上ー商品原価
で算出されます。
本の商品原価はそれほど変化していないことを考えると、現在の書店の経営の悪化の要因は他にもあるのではと思い調べてみました。
それが面積当たりの売上効率の低下です。
今回は書店の経営統計データを使って本専業書店の売上総利益率についてお話します。
※弊社調査の専業は書籍・雑誌売上の比率が80%以上としています。
書店の利益率は一般小売業より16pも低い
本を専業にしている書店の売上総利益率を一般小売業と比較してみました。
日本政策金融公庫の2017年調査によると、一般小売業の平均は39.1%です。
それに対し、『書店経営指標2019』の専業書店では23.02%で、その差は約16pもあります。
この結果から、書店の利益率は確かに世の中の小売業の中では低い業種です。
では、書店の利益率はどれくらい変化してきたのでしょうか。
『書店経営指標』の専業書店の売上総利益率を直近10年スパンの推移にしたのが下の表です。
売上総利益率の10年間の平均 23.25%と、各年の変動幅を見ると、プラス・マイナス 1.5pぐらいに収まっています。
つまり「昔の利益率は高かった」ということはなく、むしろ、書店の企業努力や業界全体の努力で微増傾向にあるといえます。
経営状況の悪化は売上効率の低下が要因?
※売上効率は専業書店の本の1坪当り売上高(月商)を使ってます。
2009年版の185千円に対し、最新の2019年版では137千円と、実に15%も下がっています。
まとめ
書店経営に大きな影響を及ぼしている要因は、低い利益率もさることながら、売上効率の大幅減少であるというのを見てきました。
下記の図は、昨年、私どもが実施した『書店員マインドアンケート』の「書店で働いていて良かったこと」という設問の結果です。
第2位が、
「お探しの本を見つけたときなどに、お客様に喜んでもらえる」、が72%もあったことでわかるように、書店はどんな時でも、お客さんと本を結びつける様々な努力をして皆さんを待っています。
書店関係者は、売上総利益率の引き上げもままならないという現実の中にあっても、「本屋であり続ける」という矜持にも似たマインドがあるのだと思います。
さあ、今日も、書店へ行ってみましょう。
出典
※「小企業の経営指標調査2017年調査」日本政策金融公庫総合研究所
※『書店経営指標』2009~2019年版 専業企業の売上総利益率 Book1坪当り売上高(月商)