いつも『書店経営指標』をご利用いただきありがとうございます。
私ども制作チームは、常に「正しい情報をたくさん提供する」ことを重要に考えていたりするのですが、反面、「数字が多く、どこをどのように見たらよいか迷う」などなど、数値の見方もさることながら「何を軸に比較」したらよいかというご質問をいただくことがあります。
『書店経営指標』ではPLやBSなどの企業全体の分析をした「企業編」と店舗単位の簡易PLなどを分析した「店舗編」があります。
そこで今回は「店舗編」の数値の活用の一例を指標の値を使ってご紹介します。
「店は利益が出ているのか」
~交差比率を比較する~
『書店経営指標』では『2014年版』から“利益が出る店舗づくり”をコンセプトに「店舗編」の分析を始めており、店舗レベルの利益である営業利益率がプラスの店とマイナスの店の平均値をまとめています。
その一つの「交差比率」を軸にした活用例をご紹介します。
「交差比率」というのは何を見る指標か?
小売店舗の売上は、店内にある在庫商品が販売されて初めて売上となり、そこから仕入た商材の原価を差し引いたものが店舗の利益(粗利益)となります。
「交差比率」は、この「在庫商品が店舗に効率的に利益をもたらしているのか」を示すモノサシとして使われてます。また、この指標は2つの指標の総合的な指標になっているので、悪い(良い)原因が2つのどちらにあるかを分析する使いやすい指標でもあります。
下記が算出する式です。
算出の式は「売上総利益率」と「商品回転率」に分解できます。
総合的な良し悪しの要因がどちらにあるかを確認します。
そして算式を分解すると、「交差比率」は、店舗の商品在庫高(販売に投下した資本)が生み出す利益額の割合だという事がわかります。
ちなみに、『書店経営指標』の商品回転率は「店舗編」は本体価格で、「企業編」は原価で算出していますのでご注意ください。
交差比率が100%ってどういう状態?
交差比率が100%という場合は、
「店頭在庫金額と同額の利益額を1年間で創出した」という状況で、別の見方をすれば「投下した資本以上の利益は生じていない」ことになります。
つまり100%以上になる事が店舗の利益を積み上げることにつながるということになります。
なお、交差比率の考え方は新規商材を導入する場合の基準としても用いられています。
『2019年度』の書店の交差比率の平均は97.3%
『書店経営指標2019年版』の調査店全体の平均は、97.3%でした。
前年は127.5%でしたので、この1年間で店舗の収益性がかなり低下したことになります。
では、事例を見てみます。
①『書店経営指標』で比較する区分と数値を決める
区分別(立地別、月商別など)で営業利益率プラス店の数値を使う事や自社の目標値を設定することも有益な方法です。
※今回は交差比率(31p)と売上総利益率(23p)の全体平均値から商品回転率を算出しています。
②自店の実績値を算出する。※上記ではA店としています
③2つの要素のどちらがGAPの度合が大きいかを算出する。
このGAP度合の算出方法は一例ですが、A店は、売上総利益率は全体平均よりも上回っているが、商品回転率の方が下回っているため、改善のポイントは商品回転率向上に絞ることになります。
商品回転率の面では各商材単位の効率の良し悪しや売上在庫計画、全体のマージンミックスなどを見ることがメインになります。
店舗の商品回転率改善の際にご参考いただきたいのが下記の項目になります。
※図中の()は本誌のページをです。