2020/2 出版流通学院
書店の軒数が減少する一方で、ここ数年は独立系、個性派といわれる小規模な書店も増え始めています。
書店のタイプは違っても、人の住む町の中で本との出会いがふえる事は本当に喜ばしいことです。
さて、「あの書店はいくらぐらい売っているのだろう?」って思ったことありませんか?
今回は店舗としての書店の売上を推定する方法について考えてみます。
書店の売上は、月一千万円前後?
一般的な方法ですが、全体の売上高を店舗の数でわると、平均的な売上が出ますよね。
しかし使用する調査資料によっては結果が違ってきます。
例えば「商業統計調査」の下記の数値から計算すると、
・年間商品販売額 1,149,298百万円
・事業所数 8,169
・売場面積 801,993坪
1事業所当りの月商は、1,172万円で売場面積は98坪となります。
「商業統計調査」では売場面積無しの事業所も含まれ、商品販売額には本以外も含まれているので、実態よりも若干高いように見受けられます。
では、本だけの実績を推定している弊社『出版物販売額の実態2019』の数値で計算すると、
・書籍・雑誌販売額 945,466百万円
・新刊書店の店舗数 9,692軒
1書店当りの月商は、813万円で売場面積は85坪になります。
2つの結果を並べると、1書店の平均月商は800~1,100万円になるのですが、売場面積の大小や繁華街のような人の集まり度合の差は考慮されていないことに留意が必要です。
次に売上に大きく影響する立地の違いをみてみます。
コラム「書店店舗数・坪数/1書店当たり販売額・本坪数 10年推移」はこちら ▶
駅ビルの売上効率は郊外型の3.3倍
立地によって変わってくる売上効率を1坪当り売上高(月間)で見てみます。
弊社『書店経営指標2019』では5つの立地に分けて集計をしています。
この調査から、売上効率の高い順で並べると、駅ビル 301千円、駅前 211千円、商店街 116千円、ショッピングセンター内 98千円、郊外 90千円となり立地による違いが大きく、売上効率は3.3倍も格差があるのです。
言い換えると、平均が200千円だとすると、駅ビルはその1.5倍、郊外だと半分まで低下する、ということになります。
このような指標を使用した書店の月商の推定は、
で計算ができることになります。
このように、全体平均値よりも詳細な分析指標を使う方がより実態にちかい結果になります。
※あくまで目安なのでお使いになるときはご注意ください。
また『書店経営指標』は売場坪数別、エリア別などの調査集計も掲載しています。
まとめ
いかがでしたか?
今回は書店の売上を推定する方法についてでした。
小売店の売上を正確に推定することはとても困難なことですが、このように業種別の指標や、売上を左右する要因の指標を使うことで、売上を推定することができるようになります。
考え方自体はとてもシンプルですし他業種でも同様なので、ご参考ください。
出典
※「平成26年商業統計表業態別統計編」
第6表_産業分類細分類6061書籍・雑誌小売業(古本を除く)
※『出版物販売額の実態2019』書店店舗数・坪数10年推移
※『書店経営指標2019』商材編Book売場1坪当り売上高
※1坪 = 3.3㎡ ≒ 1.8m×1.8m ≒ 売場の90cm什器両面で4台分