2020/3 出版流通学院

書店にはどれくらいの在庫冊数があるかご存知ですか?

店頭に陳列されている在庫が多い方が、楽しく本を選ぶことができますよね。

書店を始めてみようとお考えの方にとっては、在庫はどれくらいあればいいのかは、興味のある点だと思います。

今回は、書店の立地などを踏まえた上で、店頭の在庫量の目安について試算してみます。

店舗コンセプトが違うと在庫戦略も変わる

     → 在庫冊数の目安が変わる

「書店には本が何冊あるか」というのは素朴な疑問なのですが、実は店舗の商品コンセプトによって違ってくるのです。

それは本のジャンルによって大きさや商品単価も違うからです。

例えば、陳列什器1本に入る冊数をみると、単行本は200冊、コミックは360冊、文庫だと490冊になります。

読物専門店とコミック専門店では、在庫量の差が1.8倍もあるのです。
したがって、書店の在庫量を推定するときは、店頭の展開商品の中で多いジャンルが何かを見ておくことが良いです。

ザックリと推定する時は、坪当り在庫高を冊数に換算する

主力のジャンルが良くわからないときは、平均的な「1坪当り在庫高」を使うのも一つの手法です。

弊社『書店経営指標2019』商材編では、本の1坪当り在庫高は590千円(本体価格)となっています。

本の平均商品単価を計算しやすく1,000円にすると、1坪の在庫量は590冊という事になります。

したがって、10坪の在庫冊数は5,900冊、在庫高では5,900千万円をベースに考えるといいでしょう。

 

※1坪のイメージ方法
 1坪 ≒ 3.3㎡ ≒ 1.8m × 1.8m ≒ 横幅 90cmの島什器2本が両面

コラム「書店の売上が推定できる方法は?」 ▶
『書店経営指標2019』商品概要 ▶

坪当り在庫高が高い売場規模は?立地は?

1坪当りの在庫が約590冊と分かりましたが、
では、売場が広い店舗と狭い店舗ではどちらが坪当り在庫が多いでしょうか?

答えは、売場が狭い店舗です。

下の図は、坪当り在庫高を売場規模別と立地別で比較したグラフです。

 

日販_出版流通学院_
坪当り在庫金額
出典『書店経営指標2019』商材編Book売場1坪当り在庫高

店舗で売上を作るには在庫が必要です。
その意味で、小売店としては、売場規模が小さいと什器を高くして在庫量を確保する傾向があります。

具体的には、駅ビルや駅前だと、家賃が高く区画の取り合いなどにより売場面積も小さくなるので、意図的に在庫を増やすという事になるのです。

反対に売場規模が広くなると、その分通路幅も広くなり、売場の見通しをよくするために什器の高さも低くする結果、坪当りにすると在庫が少なくなります。立地でいうと郊外店がこれにあたります。

書店の在庫量を推定する時には、1坪当り在庫590冊を平均として、売場規模や立地の状況で考えることがいいでしょう。

在庫計画は商品回転率も検討する

在庫というのは資金を販売に備える商品に変えたものです。

過剰な仕入や安易な在庫増は運転資金が膨らむことにつながるため、計数的に在庫管理をしておく必要があります。
それが商品回転率です。

商品回転率を設定することで、売上や経費、運転資金などの予算に適した在庫管理をする目安になります。

この設定した商品回転率から大きくずれないことが在庫量を適正に維持する事につながります。

日販出版流通学院_書店の商品回転率
出典『書店経営指標2019』商材編Book商品回転率

『書店経営指標2019』の商品回転率は、平均で2.5回になりました。

駅ビルや駅前では集客力と販売力が高いため3回超になりますが、一般論としては2回超は必要な基準といえます。

ちなみに、商品回転率(在庫回転率)には、金額で管理するダラーコントロールと、冊数や単位で管理するユニットコントロールがあり、店頭では簡便なユニットコントロールを使うケースが多いです。

『書店経営指標2019』商品概要 ▶

まとめ

今回は書店の在庫量の把握方法について、計数的な考え方を中心に書きました。

書店店頭の商品には、取次会社から自動的に送られた新刊や出版社が選んだフェア商品がありますが、すべてではありません。

平台やイベント台、棚にある商品のほとんどは、店長や担当者が1冊1冊丁寧に仕入れ、展開している本です。

一見、無造作に並んでいるように見えるかもしれませんが、「この本の隣にはこの作家を紹介したい」「このテーマならこれを読んでほしい」などなど、たくさんの思いをこめて並べています。

是非、手に取って、ページもめくってみてください。
「なんでこの本の隣にあるのかな?」なんて考えながら、棚をめぐるのも楽しいかもしれません。

やっぱり、書店に行きましょう。

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