2020/2 出版流通学院
書店を始めるには一体いくらかかるのか?考えたことはありませんか。
今回は開業を考えている人に向けて、資金計画を立てる際の開業資金と運転資金について書きます。
※取次会社の立場から押さえていただきたいポイントが中心になりますのでそれ以外の費用が発生する場合もあります。
なお、金額はあくまで目安です。地域や契約条件によって大きく変動します。ご了承ください。
書店の開業に必要な資金
書店の開業に必要なことは4つあります。
①-1店舗に関すること
①-2店内設備に関すること
②資金調達に関すること
③出版物の取次との取引に関すること
①-1店舗に関すること
店舗を借りて営業する場合には、保証金(通常6~10か月分)がかかります。
テナント料(賃料)も2~3年おきの契約更新時に増額を求められるケースもあります。ショッピングセンターのように共同店舗だと、テナント料以外に駐車場や宣伝広告費などの共益費用の負担もあります。
また自宅の一部を使って営業する場合は毎月のテナント料の支出はなくても、改装費用などの支出が生じます。
地域に開店を知らせる宣伝広告費も準備します。景品として粗品を準備するケースが多いです。
①-2店内設備に関すること
商品代金は後ほど詳しく説明することとして、什器と内装に関して説明します。
・書棚+什器備品
坪当り100~150千円
什器備品はサインプレートなど
ステンレス製よりも木材の方が若干高い
・内装費用
坪当り100千円
照明、床、天井を含む
・店頭サイン/看板
1,000千円
店舗建物の外に設置する突出し看板(袖看)で、
小売店が集中している路面店は設置が必須
・空調一式
坪当り200千円
10坪で約2馬力が必要
台数や売場面積により機器料金も変わる
・事務用品
100千円
電話/FAX/机/椅子/ロッカーなど
事務用機器の中古利用も増えている
・POSレジ
買取約1,000千円(リースは月20千円程度)
アプリとドロアーのみという簡易なものがあるが、
取次会社ごとに店舗の販売状況を商品単位に共有して
欠品補充などをするPOSレジ契約もある
また検索システムも取次会社ごとにあり発注機能がある
・BGM(任意)
安ければ30千円
音楽アプリ、有線放送サービス、自前ステレオなど
選択肢は多様
さらに、万引き防止対策のために、防犯カメラ、入口ゲート、バックヤードモニターなどを組み合わせることで大きく変動します。
最近は「木」の素材感も流行っており、書棚をDIYで手作り感あふれる売場を作られている方も増えています。その場合は材料費で済みます。
③資金調達に関すること
調達方法には自己資金、クラウドファンディング、金融機関借入、最近では補助金や助成金を利用できるケースもあります。
個人事業主の場合にも、オープンまでにかかる費用を開業費・繰延資産として計上し、一定期間内で減価償却として処理できます。②の資産が対象です。
POINT 金融機関借入と返済について
借入と返済は一緒に検討することが重要です。
借入には月商倍率というのがあり、平均月商の2.5~3倍以内というのが一般的な数値です。また年間の売上総利益額以内を目安とするという考え方もあります。
返済に関するシミュレーションができるサイトもありますので、ぜひご覧ください。
④出版物の取次との取引にかんすること
新刊商品を扱う取次会社と契約する上で発生するお金が保証金です。新刊を含む商品は、仕入の度に決済する方式ではなく、先に商品をおくり月末にまとめて請求/支払いをする方式です。したがって万が一支払いが困難になったときのために、取引額に応じた担保を設定しなければなりません。信認金(現金の預託)という場合もあります。
次回は、書店の運転資金、20坪と50坪の事例を交えてご紹介します。