2020/2 出版流通学院
前回は書店を開業する際の開業資金について書きました。
今回は運転資金がどれくらい必要になるか、数字を使って説明します。
書店の運転資金の考え方
まずは毎月発生する経費費用をまとめます。
中でも特に費用の大きいものは、仕入代金(買掛金)、人件費、家賃になります。
本の売上原価は70~80%ですが、仕入は月の売上よりも若干多くなります。
売上に対する人件費率は一般的に10%前後という調査があります。
同じく家賃の比率は立地によって開きがありますが、8%程度見ておきます。
その他の販売管理費には広告や包装・発送費などの販売費、水道光熱費や車両、リースなどの販売管理費、保険や社用交通費などが含まれます。
弊社『書店経営指標2019』の本専業店舗によると、
人件費や家賃などの販売管理費合計で22.9%にもなります。
この販売管理費はその月の売上高で賄うことが原則になります。
したがって、運転資金は仕入代金とほぼ同様になります。
また、借入返済がある場合にはこれと別に準備することになります。
『書店経営指標2019』の詳細はこちら▶
「書店の運営にかかる費用をシミュレーションしてみる~part1」はこちら▶
「書店の運営にかかる費用をシミュレーションしてみる~part2」はこちら▶
POINT 商品の仕入代金について
本の流通には委託制度があり、一定期間内ならば返品が可能ですが、店頭に送品された商品は一旦請求が立ち書店は支払いが生じます。
また売上の季節変動もあり、特に12月は月平均の2割ぐらい売上が増えるので、その分の仕入が1~2か月前に発生します。
その意味でも運転資金の準備は重要になります。
また、在庫金額はおおよそ坪当り400千円です。
一般的な書店の在庫構成ですと、書籍と雑誌+コミックが半々です。雑誌とコミックは書籍に比べて原価(下代)が低いので、その分在庫金額も若干低くなります。
同様に毎月の仕入代金もコミック中心なら低くなり、書籍、特に美術書や医学書などは原価が高いので仕入代金も増加します。
20坪と50坪の開業資金と運転資金のシミュレーションする
事例として20坪と50坪の表を作りました。
あくまでも目安なので、実際には関係会社にご確認ください。
20坪の開業資金は14,670千円、運転資金は月平均100千円、借入返済のCF不足分が121千円というようになります。
50坪の開業資金は35,330千円、運転資金は月平均150千円、借入返済のCF不足分が325千円というようになります。
※事例は弊社の推奨規模という意味ではありません。
まとめ
いかがでしょう。具体的に数字を出してみると、あなたは「思っていたよりも少ない」か「いやいや、かかるなあ」のどちらだと感じましたか?
本屋を始めたいとお考えの皆様、
今回、このテーマにしたのは、「本屋を始めるのは意外と高い」という事をお伝えしたかったわけではありません。
より堅実な書店経営をしていただきたいというのが趣旨で、そのためには店舗の場所の市場調査や売上予測を正しく進めていただきたいという意味です。
と、いうわけで、
今日も書店さんに行ってみよう。