2020/3 出版流通学院

小売店の売上は規模や地域の特性など様々なファクターの組み合わせで大きく変化します。
今回は、一般的な小売店の売上予測の手法を使って、1,000万円販売する上で必要な人口数を見てみます。

日販出版流通学院_書店の月商1000万円に必要な人口数

売上高を構成するファクターいろいろ

小売の業種業態によって影響度の高いファクターは変わってくると思います。
具体的な数字を使って計算する前に、大切なファクターを確認します。

 

①エリア特性

その地域の性格のことです。

一例をあげれば、都市部であれば日中の人口が増加しますが、そこへ通勤通学するベットタウンエリアでは、日中の人口は少なくなります。

またSCや商店街など商業中心地域だと、人が買い物に来る流れができていますが、住宅街や単独店舗などのケースでは、他の施設の集客力がないため、自店舗独自で集客力をつける事が絶対に必要になってきます。

 

②立地条件

書店が建つ立地といえば、具体的には駅ビル、商店街、SC、ロードサイドなどです。

ただ単純にこの4種類ということではなく、より詳細に観察する必要があります。つまり、駅ビルでも各路線が乗り入れるターミナル駅なのか、急行が止まらない駅かで商業の集積度も人の多さも変わってきますので、駅の種類が大きなファクターになるのです。

駅ビルでは、メイン改札からの視認性や距離などが売上が変動するファクターになります。商店街やロードサイド店舗なども、メイン通路に位置するかどうかで全く条件が変わってきます。

 

③競合状態

競合とは競い合うことですが、市場調査やマーケティングの中では魅力度の相違を見る事にちかいです。

わかりやすい例が扱っている商材です。
一つの種類よりも複数の商材を扱う方が引き寄せられる度合いは高いですよね。しかし、一つの種類でも希少性が高いものであれば、魅力度は一気に高くなります。

同じようなことが人口密集地等からの距離にも当てはまります。例えば競合店が商圏内の中心地か端にある場合、中心地にあるほうがその商圏内からの吸引力は強くなりますが、端の売場規模が広ければ端の店舗の方が魅力度は高くなる場合もあります。

競合に関してのファクターは特に多く、一つの要素だけでなくそれに関連した要素も大きく関連してきます。

その上、今の時代、競合は同業者だけではありません。
人の持っている「時間の取り合い」は業種や扱い商材の垣根を越えたものになっていますので、あらゆる角度からの検討が必要なのです。

 

④人口特性

その商圏内の人口数の多さやボリュームゾーンとなる中心世代の特徴です。

もう一つ大切なのが消費特性で、どれだけ消費に使っているかということです。
全国平均では「家計調査」、地域差を反映させる「所得格差」などが使われます。

30-40歳代のファミリー世帯と高齢世帯では、お金を使う目的も金額も違ってきますので、店舗で扱う商材がこれらの消費特性に合うか、どれだけ消費されるかを判断します。

 

⑤店舗形状と面積

売上高は店舗の位置によっても変わります。
例えば、売場フロアは1階が一番売上効率が良く、上階または地下に移動するたびに売上効率は低下していきます。

売場はフロア階だけでなくメイン通路に面していることが望ましく、路地裏やソデ通路になると入店率も低下していきます。

また、面積は同じでも四角ならば良いですが、三角形の角がある変形だと什器が置きにくく、在庫量も減り、売上にも差が出てきます。面積は単に広ければよいというわけではなく、あくまでも売上予測と経費のバランスによります。

 

⑥類似店舗事例などからの係数

取次会社はさまざまな店舗の開店を支援しているので、市場調査においてもノウハウを蓄積しています。
例えば「100坪」「本+レンタル」「商圏4万人」など、主要ファクターが同じような店舗の売上のデータベースを使い、売上の係数を蓄積しているケースもあります。

 

書店の月商売上1,000万円に必要な人口数を計算してみる

では、1,000万円の売上が成立する人口数を計算してみます。

上記①~⑥のファクターの中から、計算しやすい③競合状態、④人口特性のファクターを単純化して計算します。

実際にはこれをベースに他の質的ファクターなども数値化して考慮することになります。

今回は人口数がどの程度必要かを試算するので、下記の算式に数値を当てはめてみます。

日販出版流通学院_書店の月商1000万円に必要な人口

① b.1人当たり購入額を算出する

図書に関する購入額は、弊社『出版物販売額の実態2019』で毎年算出してしています。

今回は書店ルートの1人当たり購入額 7,577円を使用します。
そして全国平均値に地域性を加味するために「所得格差」をかけて消費特性を反映せます。

 

1人当たり図書購入額を掲載『出版物販売額の実態2019』の概要▶

【実態 2019】年間1人どれくらい使う?

② c.自店マーケットシェアを算出する

商圏内の自店の面積のシェアをベースにする考え方が一般的な方法です。

例えば、既に100坪の売場があり、新規に100坪を計画するとマーケットシェアは100÷200の50%というようになります。

③ a.人口数を算出する

ここまでを整理すると下記になります。

日販出版流通学院_書店の月商1000万円に必要な人口

という事で、上記の条件だと月商売上高1,000千円販売するには、人口数で考えると、32,000人程度が必要となります。
※あくまで単純計算の例です。ご了承ください。

 

都市別人口を掲載『出版物販売額の実態2019』の概要▶

まとめ

今回は、一般的な小売店の売上予測のファクターを確認し、1,000万円を売り上げる店舗の人口ファクターを算出してみました。

実際には、出店場所やその将来性、店舗の商品戦略やサービス戦略などの条件で結果は変わってきます。

各調査会社や出版取次会社では、そういった条件に柔軟に対応できるよう、ファクターごとのチェックリストや点数化形式などで計算精度を高める工夫をしています。

「この店の周りにはどれくらい人口がいるんだろう」なんてことを考えながら、今日も、書店さんに寄ってみませんか。

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