2020/2 出版流通学院
個人で書店を開いてみたいと考える人が多くなってきました。書棚スペースを共有して使うケースなど、特定の店舗を持たずに”開店”するケースも増えてきています。
書店が増えることは本当に喜ばしい事です。
今回は、店舗を構えて営業する場合のかかる費用について、
売上の目安、経費、営業利益がどのくらいになるのか、『書店経営指標』の指標を使ってシミュレーションしてみました。
そもそも『書店経営指標』ってなんですか?
全国の書店様からのアンケート調査をもとにして損益計算書や貸借対照表、店舗実績などの経営数値を、利益率を軸とした分析指標にまとめたもので、1963年から毎年発行しているものです。
シミュレーションの設定条件
シミュレーションの目的は、月商売上を設定し、支払いができる人件費と地代家賃を算出するためです。
今回のシュミレーションの設定は次のようにしました。
・商店街立地
・売場規模 85坪
・10~22時の12時間営業(月360時間)
・正社員の労働時間は1日8時間、週休2日
シミュレーションで計算しやすいよう、設定の売場規模は開店した書店の平均ではなく、弊社『出版物販売額の実態2019』の書店店舗数と坪数から算出した平均坪数にしています。ご了承ください。
手順は3つに分け、2回に分けてコラムを書きます。
1回目はStep1、2回目はStep2とStep3です。
Step1 簡易PLを作成する
①1カ月の売上高設定をする
まずは、1か月の月商売上高を店舗立地別の月間坪売上を参考に設定します。
下記は『書店経営指標』店舗編効率性分析の抜粋です。
「プラス店」「マイナス店」というのは、店舗の営業利益率が0%以上をプラス店、0%未満をマイナス店として集計したもので、「月間坪売上」が小さい順に並べています。
営業利益率が「プラス店」の方がおおむね実績が良いので、これ以降、シミュレーションでは「プラス店」の指標を使います。
上記の表を使い、月間坪売上が低い「商店街」「本専業」のプラス店の平均をパターン①、それに売上が若干高い「100坪以下」を加えてたものをパターン②として下記の計算をしました。
2つ準備する理由は、売上を低く見た場合の最低限のコストを見ておくためです。
2つの月商売上では1,600千円ほどの開きがあります。
今回は月商売上が低いパターン①をベースに進めます。
目標とする店舗効率
月商売上 1,300万円
在庫高 3,900万円
年間商品回転率 約4.0回
②予測した月商売上から簡易PLを作る
設定した月商売上から、売上総利益、人件費、地代家賃、営業利益を計算してみます。
下記の表は『書店経営指標2019』店舗編収益性分析からの抜粋です。
利益の源泉である売上総利益率は、扱う商品原価によって増減するので、「本専業」の比率をモデルに算出したのが下記です。
店舗の収益性を維持する上で、この月商売上で、かけることができる経費の上限という意味になります。
経費合計で2,998千円、内訳は「人件費」で1,230千円、「地代家賃」で942千円、「その他販管費」で825千円というのが目安になります。「その他販管費」にはチラシや包装紙などの販売費、水道光熱費やリースなどの設備管理費などが含まれています。
「地代家賃」を坪当りに直すと11,082円となります。
賃料を決める際には、このような指標を活用した事業計画を十分に説明し、この額以内に交渉できることが望ましいです。
なお、『書店経営指標』の「地代家賃率」には共益費用等も含んていますのでご注意ください。
以上で1回目を終わります。
次回は人件費を含む人員計画について進めます。
書店の運営にかかる費用をシミュレーションしてみる~part2▶
出典
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